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PATTERN STUDY 01 / 17
中間記法 / MNP — MIDDLE NOTATION PATTERN

どんなツールでも、
簡単・爆速・安定に
AI 化する方法。

内部にテキスト記法を一層挟む——それだけの話です。
DLM を AI 化した実例から、中間記法パターン(MNP)の全景を解説します。


REZO · 永松健志 DECK / V3
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発端 02 / 17

02私は DLM という独自の図解手法を使っています

DLM は、サービスに関わる人・使わない人も含めて、全ての意思決定の分岐を一枚の地図に描く手法です。CJM(カスタマージャーニーマップ)が「使う人の一本道」を描くのに対して、DLM は使わない人、離脱する人、別のサービスに行く人まで含めた全景を描きます。私は業務で日常的にこの手法を使っています。

DLM EXAMPLE 業務を している Web 検索する 同僚から聞く ツールを認知 KPI: 認知数 導入する 「今じゃない」 と保留
困りごと 03 / 17

03この手法を、チームやクライアントにも使ってほしい

私ひとりで使っている分には、手書きでもホワイトボードでも困りません。でも他の人にも書いてもらうとなると、手書きでは回らなくなります。手法の解説書を渡しても、いざ書こうとすると筆が止まってしまう。AI に任せて、楽に書けるようにしたい。ここから話が始まりました。

私ひとりで使うなら

ホワイトボードで済みます

頭の中にある手法なので、自分なら迷わず書けます。付箋でも、紙でも、Miro でも構いません。

他の人にも渡すなら

AI に書かせたい

解説書を渡しても、いざ書こうとすると手が止まるのがよくある話です。AI にラフを書かせて、人がそれを直す、くらいが現実的だと考えました。

試してみたが 04 / 17

04既存の AI 連携を試しましたが、どれも何かが欠けていました

AI に図を書かせる方法は、今はいくつかあります。私も試してみたのですが、DLM のような独自の要素を含む図にはどれも合いませんでした。

A. Figma / Miro の MCP を叩く
図形への翻訳が毎回必要になります

「この概念は角丸四角、この矢印は破線」と AI に毎回教え直すことになります。手法の用語がただの図形に化けてしまいます。受け手にもアカウントが必要です。

B. Notion のテンプレートを用意する
図が弱く、動きがありません

手法の説明を載せるには向いていますが、DLM のような分岐のある図は Notion では描けません。テンプレを埋める体験も単調になりがちです。

C. AI にその都度 HTML を書かせる
毎回違うものが出てきます

一発で動くものは出ます。でも再現性がありません。「前の配色に戻して」「ここだけ直して」が効きませんでした。

D. Mermaid / PlantUML に乗せる
そもそも DLM は描けません

Mermaid の語彙は「矢印・ノード・分岐」の汎用だけです。「大数通過点」「解放端」「離脱」といったDLM 固有の語彙が表現できません。

気づき 05 / 17

05そこで、ふと思いつきました

THE IDEA

独自の記法と、それを
図に変換するパーサーを
自分で作ればいいんじゃないか?

つまり、自分の出したい図に特化した「小さな Mermaid」を AI に作ってもらえばよいのです。記法も、パース処理も、描画も、編集画面も、AI に書かせるプロンプトも、全部まとめて 1 枚の HTML に収まります。

先に用語をひとつ 06 / 17

06DSL とは「特定ドメイン専用のテキスト記法」のことです

Mermaid や PlantUML に代表される、特定の用途に特化した独自言語のことです。HTML や Python のような汎用言語ではなく、あるドメインの状態を表現するための記号と構文の体系です。MNP では、この DSL を「AI が読み書きする専用言語」として使います。

入力

            
出力
実例 07 / 17

07例:自分用の UX マップ(DLM)

私が業務で使っている独自の図解手法です。記号 * は出発点、| は並列、>> は「多くの人が通る地点」、~ が終着、.. が離脱を表します。書くと描かれる仕組みです。

入力(DSL)

          
出力(図) * 起点 / #1 業務を している | 並列 / #2 Web 検索する | 並列 / #3 同僚から聞く >> 大数通過点 / #4 ツールを認知 KPI: 認知数 ~ 解放端 / #5 導入する .. 離脱 / #6 「今じゃない」 と保留
命名 08 / 17

08このパターンを「中間記法(MNP)」と呼ぶことにしました

GUI と LLM の間にテキスト記法という中間層を置く設計パターン。人はGUIで操作し、AI はテキストで読み書きする。この分離が安定した双方向更新を実現します。Middle Notation Pattern(MNP)——名前にそのまま構造が入っています。

HUMAN SIDE
GUI / ツール
人が直感的に操作
同期
MIDDLE LAYER
テキスト記法
状態をテキストで保持
同期
AI SIDE
LLM / AI
テキストを読み書き
MIDDLE NOTATION PATTERN 中間記法 MNP
今回作ったもの 09 / 17

09DLM Editor — AI が書き、人が直せるエディタ

ここまで見てきた MNP の実装例がこちらです。DLM(意思決定マップ)を AI に書かせて、人が GUI で直せるエディタ。記法を覚える必要はなく、AI に書いてもらった記法を貼るだけで使えます。

前提の反転 10 / 17

10従来の DSL と何が違うのか

今までの DSL は「人が覚えて書く」前提で作られていました。でもこのやり方では、人は DSL を書きませんし、見る必要もありません。DSL はAI とツールの間だけで流れる中間の形になります。人が持つのは、手法の考え方だけで十分です。

項目
従来の DSL
中間記法
DSL を設計するのは
人間
AI
DSL を書くのは
人間(ユーザー)
AI
人が覚えるもの
手法 + 記法のルール
手法の考え方だけ
DSL の役割
人が読み書きする
裏で流れる中間表現
使う側の体験 11 / 17

11使う側は 5 ステップで済みます

使う人が覚えるのは「手法の考え方」だけです。記号もツール操作も、基本は覚える必要がありません。あとは AI に頼んで、返ってきたテキストをエディタに貼るだけです。

1
手法を知る

5 つ前後の考え方を記事 1 本で読みます。

2
プロンプトを貼る

エディタ内に用意されたプロンプトを AI に貼ります。

3
AI に頼む

「こういう図を書いて」と普通の日本語で頼みます。

4
エディタに貼る

返ってきたテキストを貼ると図が描かれます

5
手直しする

マウスで動かしたり、AI に差分を頼んだりします。

作る側の体験 12 / 17

12作る側が磨くのは、コードではなく判断軸です

作る側も DSL の中身を知らなくても構いません。拡張したくなったら、今の HTML を AI に渡して「こう変えて」と頼めば、新しいバージョンが返ってきます。資産はコードではなくなります。代わりに大切になるのが、「良い図とは何か」を言葉にしたプロンプトです。

従来の作り方

コードが資産でした

読みやすさ、拡張性、保守性、API 設計に投資します。チームで共有し、長期で育てる前提で書きます。

このやり方

プロンプトが資産になります

コードは作り直せる副産物です。磨くのは、手法の判断軸を言語化したプロンプトの方。実装にかけていた労力が、プロンプトの質に振り替わります。

応用 13 / 17

13DLM 以外も、全部同じやり方で作れます

記法の語彙が変わるだけで、「テキストが GUI と AI の間を流れる」構造はどれも同じです。画面設計・採用CMS・脱出ゲーム——それぞれ試してみてください。

入力(DSL)

            
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応用可能性の考察 14 / 17

14中間記法は、状態を持つものならどこでも使えます

条件は二つだけです。状態がテキストで表現できることと、同じ構造が繰り返されること。この二つが揃えば、どんなドメインにも適用できます。

UI / ツール
ワイヤーフレーム
screen: login
  field email
  button "送信"
画面仕様をAIと共同編集
CMS / 採用
求人・コンテンツ管理
job: "Webエンジニア"
  type: 正社員
  tag: #React #リモートOK
Notionなど既存DBとの連携も可
ゲームエンジン
シナリオ制御
npc "どう対応する?"
score 62  fire_up 15
choices "確認"|"受ける"
ゲーム状態をAIが読み書き
UXマッピング
DLM / CJM
node 認知 → 検討
  .. 離脱
~ 解放端 / #3
独自手法の記法化(発端)
ドキュメント生成
仕様書 / 契約書
contract: 業務委託
  party: 甲 乙
  date: 2026-06
テンプレ構造をAIが埋める
難しいケース
向かないもの
動画・音声編集(状態が巨大)
物理演算・リアルタイム処理
手法がまだ曖昧なドメイン
プロンプトの中身 15 / 17

15プロンプトに何を書くかで、全部が決まります

AI に渡すプロンプトの内訳を見ると、記号のルールは最低限で済みますが、「良い図とは何か」の判断軸の方がずっと厚くなります。この判断軸の厚みがないと、どんなに記号を作り込んでも、平凡な出力しか返ってきません。

記号のルール MINIMAL
判断軸・手法の哲学・暗黙知の言語化 VALUE LIVES HERE
短くて済みます ここが厚くなります
効く条件・効かない条件 16 / 17

16このパターンは万能ではありません

このやり方は、手法が先にあることが前提です。手法が薄ければ、AI が出してくるのは「どこかで見た平凡な図」になってしまいます。AI は平均的なものを出すのが得意で、固有の経験の代わりにはなりません

効きます

自分の手法を持っている(あるいは育てている)場合です。良し悪しを自分の言葉で説明できること。個人〜小チーム〜クライアント数社の規模で配る使い方に向いています。

効きません

手法がまだ曖昧で、判断軸をプロンプトに落とし込めない場合です。大勢で同時編集することが必須の場合。会社が AI の使用自体を禁止している場合。

まとめ 17 / 17

17中間記法の要点

01 / 作るもの

手法専用の、小さな Mermaid」を作ります。Mermaid を使う話ではありません。

02 / 入口

AI に渡すのは手法の考え方だけです。記法も描画も編集もプロンプトも、全部 AI が組みます。

03 / 資産

コードは再生成できる副産物です。作る側が磨くのはプロンプトに移ります。

04 / 前提

効くかどうかは、手法の判断軸を自分で言葉にできるかの一点にかかっています。

05 / なぜ今か

着想は新しくありませんが、AI が独自の記法を扱えるようになったことで、ようやく実用的な選択肢になりました。